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この記事は2023年夏休み特集のものです。最新トピックスはこちら
暑い夏こそ見たく聞きたくなるのが怪談やホラー。多彩なジャンルがある中、ショッキングな展開や不条理な現象、時に悲劇的な内容までオムニバス形式で描くのが、的野アンジ(
@matonotoma
)さんの漫画「僕が死ぬだけの百物語」(小学館)だ。
「少年サンデーS(スーパー)」および「サンデーうぇぶり」で連載される同作は、少年「ユウマ」が百物語を語るという形式で、毎話舞台の異なる短編ホラーが描かれる。7月12日に単行本最新6巻が発売されたほか、「次にくるマンガ大賞 2023」のWebマンガ部門にノミネートもされるなど、今注目のホラー作品だ。
作者の的野さんが抜粋して公開した話数がTwitter上でたびたび反響を集める同作。今回は6月に投稿され7700件を超えるいいねがついたエピソード「カカシ村」(単行本第5巻収録)を紹介したい。
とある少年が暮らす村には、精巧な人の顔が載ったカカシがいくつもあった。だが、そのカカシは村の誰かが作ったものではなく、誰かが勝手に置いていったものが集まったのだという。
村は“日本一のカカシ村”と呼ばれているが、そう呼ばれる理由は誰も知らなかった、ある日、カカシの片付けを手伝った少年は不思議に思い、頼んできた村の住人に「いつから置いてかれるようになったんです?」と問う。「ずっと昔からだと思うけど」と答えるもののやはり詳細を知らない男性は、この機会に調べてみようかと村のカカシに興味を持つ。
翌日、少年は道のど真ん中に新たにカカシが置かれているのを発見する。邪魔に思いながら避けて進もうとした少年だったが、ふと覗いたカカシの顔が、昨日話したばかりの村の男性にそっくりであることに気付く――、というエピソード。
冒頭から登場し、今回描かれるホラーの中心にあると予感させる不気味なカカシ。読者からは「ぞっとした」と恐怖した感想が多く寄せられたほか、「本来の理由が何なのか気になりました」と、作中では明かされることのない怪奇現象に引かれる声も。
「僕が死ぬだけの百物語」は、こうした謎をはらんだまま終わる作品から、真相が判明することで恐ろしさが増す話まで、オムニバス形式で毎回趣向が異なるのが大きな魅力の一つ。作者の的野さんによると、作中の百物語は事前に用意したものではなく連載の中で毎回一からから作り上げているという。
また、今回紹介したエピソードのカカシのように、恐怖の発端となるもの自体は世にありふれた物や事象であるエピソードも多く、これには「漫画の中だけのお話になってしまわないよう、なるべく身近なものをテーマに置いています」と的野さんのこだわりが反映されているそう。そうした題材の中には「八尺様」や「テケテケ」など“有名で身近になった妖怪・都市伝説”も含まれるなど、柔軟な選び方で多様なテイストのホラーに仕立てている。
それぞれの短編が読み応えあるホラーである一方、連載では、百物語の前後に、怪談を語る少年「ユウマ」の姿が描かれている。こちらは子供部屋の机に画角が固定され、描かれるのはユウマの言葉や身振り、時に部屋を訪れる家族や友人らの態度といった断片的な描写のみながらも、明確に連続するストーリーが展開。連載を重ね、時にはユウマ以外の人物が語り手となるなど、ユウマを取り巻く謎というもう一つの恐怖も徐々にその輪郭を見せつつある。
的野さんは「6巻ではそれぞれ違った後味の短編が詰まっていますので楽しんでいただけると思います。また、語り部であるユウマくんやその近辺も後戻りできない方向へと進んでゆきます。是非、お手に取っていただけると幸いです」とコメントを寄せた。
取材協力:的野アンジ(@matonotoma)
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