全国
この記事は2023年夏休み特集のものです。最新トピックスはこちら
ホラーにおいて、異様な手段やすさまじい怪力で容赦なく人を捕えようとする怪異は王道の展開。だが、「同じ方法」で怪異を捕える人間と出会ってしまったら…?
蒸し暑い夏に読みたくなるのが、背筋がぞっとするホラー作品。ネブクロ(
@nebukuro41
)さんがくらげバンチ(新潮社)で連載する漫画
「訳アリ心霊マンション」
(※単行本第2巻は2023年5月9日発売)は、本格ホラーでありながら痛快なコメディや悪霊も救うハートフルな展開も同居した話題作だ。
5月にネブクロさんがTwitterに投稿した番外編「押し入れ」には8万件を超えるいいねが集めるなど話題を呼ぶ同作。「ここまで恐怖とギャグと感動をギュッと押し込んだ作品ない」「ホラーなのに大家さん出てきた瞬間ギャグに」と読者から多くの反響を呼んだ番外編の紹介とともに、作者のネブクロさんに連載2年目を迎えた同作への思いを取材した。
「訳アリ心霊マンション」は、一念発起してマンションオーナーとなった主人公の「東雲薫(しののめかおり)」が、心霊現象で敬遠されるマンションにお化けや霊を住まわせようと“入居者”探しに奔走するストーリー。薫に斡旋されるのはひと癖もふた癖もある悪霊ばかりで、番外編「押し入れ」では、とある民家の押し入れに長年潜んでいた霊が登場する。
親が共働きで一人っ子の少年は、幼い頃から2階の押し入れと“遊んで”いた。誰もいないはずの押し入れに話しかけると、闇の中からいつも返事が返ってきたのだ。
だがいつしか、押し入れの中に何かの影が見えるようになった少年は押し入れに近づかなくなり、一人の時間は家の外で時間を潰すようになっていた。
そんなある日、少年は家の外で鎖の着いた枷を振り回す異形と出くわす。不気味な笑顔を浮かべ「コッチおいで」と呼ぶ異形の言葉は、押し入れから聞こえた声と同じものだった。
自分と遊ばなくなった少年とずっと遊んでいられるよう、捕まえて押し入れに閉じ込めるべく現れた異形。その魔の手から逃げ回る少年が出くわしたのは、なぜか怪異同様に投げ縄を振り回す女性だった。
「同じ地区に2人も投げ縄使いがいるモノなの!!?」と動揺した少年。女性と異形はお互いに鎖と縄を相手に巻き付け、その様子に混乱する少年の「ファイッ!!!」という掛け声で不審者VS怪異の戦いがはじまり…という展開。
親しかった相手が遠ざかり悪行に走るという正統派ホラーではじまりながら、不審者こと主人公の薫の闖入でギャグとバトルに風向きが変わるギャップが笑える短編。今回紹介した番外編のように、「入居者探し」に奔走する薫がホラー展開をぶち壊すギャグが同作の大きな魅力の一つだが、一方で本編ではあっけらかんとしながらどこか歪みが見え隠れする薫を取り巻く謎など、シリアスなストーリーも見どころとなっている。
「WEBマンガ総選挙 pixivコミック10周年 特別編」では第3位に選ばれ、現在開催中の「次にくるマンガ大賞2023」のWebマンガ部門でエントリー作品5170作の中からノミネートされている「訳アリ心霊マンション」。初連載となる同作が2年目を迎え、自身も受賞した
くらツイ漫画賞
にて「怖い話」部門の受賞作にネブクロさんが講評をする「ネブクロ賞」が設けられるなど精力的な活動を続ける作者のネブクロさんに話を聞いた。
――連載2年目を迎え、「訳アリ心霊マンション」はますます反響を集めています。連載を続けるなかでの気付きや変化を教えてください。
「なんとなくですけど、そろそろ漫画家としての自分のスペックが見えてきたので、それを超えてしまうようなスケジュールは組まないよう気を付けないとなぁ……、という意識が芽生えました」
――怪異や心霊現象の恐ろしさと、それを吹き飛ばすコメディのギャップが本作の大きな魅力です。作品を描く上でのメリハリで特に意識されているところはありますか?
「『訳アリ心霊マンション』は“ホラーコメディ”というジャンルからブレないよう意識して描いています。“ホラー漫画”じゃなく、“コメディ漫画”でもない。その2つがミックスして成り立つホラーコメディです」
――それぞれのジャンルの要素の噛み合いは確かに強く感じる部分です。
「目指すところは読みやすさ。でもウチはわがままなので、さらにそこに祓い屋というファンタジーも入れています。『ファンタジーホラーコメディ』、読みやすさで入った後に、惹き込まれる漫画的表現でさらに楽しんでいってもらいたいです」
――また、ご自身も受賞された「くらツイ漫画賞」では、「怖い話」部門の受賞作にネブクロさんが講評をする「ネブクロ賞」も予定されています。講評する立場となってのお気持ちを教えてください。
「審査員みたいな立場の人は基本恨まれるし、恨んでいい人間だと思っているので、僕がなにか上から酷評出すときは恨まれる覚悟で言います。なので褒めます」
――5月には単行本第2巻も発売されました。興味を持った読者に向けてメッセージをお願いします。
「お話した通り、この作品はあくまでホラーコメディです。普段ホラー物を読まない人にこそ刺さるよう描いています。気軽に背筋を凍らせて、その後笑って腹筋割っていってください」
取材協力:ネブクロ / くらげバンチ(新潮社)
夏休みの人気イベントランキング | 夏休みの人気スポットランキング |
最近見たイベント&スポットページはありません。