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この記事は2023年夏休み特集のものです。最新トピックスはこちら
お盆を過ぎると、夏の終わりを感じて少し切ない気持ちになるもの。今回はそんな時期にぴったりな心を打つ短編ホラー漫画「夏の終わりに怖い話」を紹介しよう。本作は、日本の伝統的な文化であるものの、怖いイメージを抱く人も多い「日本人形」を題材にした、櫻日和鮎実(さくらかわ・あゆみ)(
@ayuneo
)さんの作品。SNSで発表、たびたび再掲されてきたが、そのたびに数万件のいいねがつき、「最後のやり取りに泣いた」「怖イイ話」と称賛するコメントが多く集まる。最後まで読めば、あなたの実家に眠る古い人形の見方が変わるかもしれない。
物語は、とある民家の物置に長年放置された日本人形が、人間に恨みを抱き呪殺を謀るところから始まる。ターゲットを待っていると、扉を開けて入ってきたのはよぼよぼのお爺ちゃん。「放っといても死にそうな奴きた…」とやや拍子抜けするが、まずは一晩で化けて驚かすことにした。
翌朝、日本人形は髪が伸び歯が生え、さらに不気味さが増していた。その姿を見て怖がるかと思いきや、「成長期の子供はさすがじゃのう」とまさかの反応。そして、お婆ちゃんの形見のツゲ櫛で髪をとかし始めたのだ。
その後も、新しい着物を着せて「まるでお姫さまみたいじゃ」と喜ぶ顔を見るうちに、「悪くないわね」と気持ちに変化が生まれていく。一時は呪い殺そうとしたのに、お爺ちゃんに死神が近づくと追い返すほどに情が芽生えていた。
ある晩、日本人形はとうとう極楽浄土へ行くことを決める。お爺ちゃんの枕元でお礼を言い去ろうとすると、「じいじの独り言に付き合ってくれてありがとうね」と言葉が返ってきた。さらに「もしばあさんにあったら、頃合いを見て行くよと伝えておくれ…」と続ける。日本人形は「わかりました。でも長生きしてね」と答え、今までにない穏やかな表情で消えていった。
本作への反響の大きさについて作者の櫻日和鮎実さんに伺ってみると、「純粋にとてもうれしいです。『この話好きなやつだ!』と覚えていてくださる読者さんも多く、コメントはすべてありがたく読ませていただいております。たくさんの方がかわいい話だと思ってくれたらそのぶん思い入れが深まります」と話す。
本作に込めた思いについて、「日本人形はもともと子供を守るために作られたもので怖いものではないんだよという気持ちと、むやみに怖がらずかわいがって接していればちゃんと応えてくれるはずだよという気持ちで、説教臭くなく笑えるようにほっこりした絵柄を選んで描きました」
一説によると、昔の日本人形はどの感情も表現できるように、あえてすまし顔で作られているという。それが不気味と思われる所以かもしれない。しかし、こちらがうれしいときはにこやかな表情に、落ち込んでいるときは寂しそうな表情に、その時々の気持ちに静かに寄り添うことで、子供たちを守ってきたのであろう。
取材協力:櫻日和鮎実(@ayuneo)
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