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最高気温が40度を超える日が珍しくなくなっている昨今の夏、これまで以上に熱中症対策の重要性が叫ばれている。日陰での休息やスポーツドリンクでの水分補給などの方法があるが、最近では「深部体温」を下げることが非常に効果的だと言われている。
内臓など身体内部の温度である深部体温を下げるために大事なのが、冷たい飲み物を飲むこと。スポーツや野外での作業を行うときだけでなく、屋内や通勤・通学でも深部体温の上昇を防ぐことが熱中症対策には重要だ。
「人々の健康を守る」を掲げて企業活動を行う大正製薬株式会社(以下、大正製薬)は、2021年に熱中症対策に適したドリンク「リポビタンアイススラリー Sports」を発売。今回は同社のマーケティング本部 ブランドマネジメント1部 飲料グループの樋口裕貴さんに、商品の特徴や開発秘話、そして深部体温を意識した熱中症対策について話を聞いた。
アイススラリーとは、細かい氷の粒子が液体に分散した状態の飲料のこと。通常の氷よりも結晶が小さく流動性が高いことから冷感を得やすい特徴がある。大正製薬のリポビタン アイススラリー Sportsはエネルギーの源クエン酸とビタミンB1・B2・B6に加えて、汗で失われやすい塩分を同時に摂取できるのが特徴。まさに「凍らせて飲む、リポビタン」だ。
この商品が開発された背景には、昨今の気温上昇に伴う熱中症搬送者の増加があった。このような社会課題を解決すべく、大正製薬は熱中症対策について意欲的に取り組んでいるスポーツの世界に注目。そのなかでも、慶應義塾大学のラグビー部で手作りのアイススラリーが使用されていることを知り、研究を開始した。
「国立スポーツ科学センターや広島大学の長谷川教授とともに研究し、アイススラリーが熱中症対策に非常に有効であることがわかりました。そこで弊社では開発を行い、2021年に『リポビタン アイススラリー Sports』という名称で発売して、一般の方々にも気軽に熱中症対策をしていただけるよう取り組んでいます」
2024年現在こそ、アイススラリーは一般的になりつつあるが、発売当初の2021年はそもそも市場に認知されていなかったこともあり、マーケティングには非常に苦戦を強いられたそうだ。営業担当がドラッグストアやコンビニエンスストアに商品を持っていっても「こんなのは売れない」と言われたとか。冷夏やコロナ禍の影響もあり、商品の販売はうまくいかなかったという。
しかし、2022年の夏は想定よりも早い段階で梅雨が明けたこと、そして2021年よりも猛暑となる予報が出たことで、熱中症への注意喚起の報道が多くなされた。そのタイミングで大正製薬はこれまで行ってきたアイススラリーに関する研究リリースを発表した。
「研究結果を発表したおかげでさまざまなメディアに注目していただき、熱中症対策商品のアイテムのひとつにアイススラリーを取り上げていただくことができました。その結果、さまざまなドラッグストアやコンビニエンスストアでの販売につながり、一般生活者の皆様への認知獲得につながりました」
一時は品薄状態となるほどに人気商品となったアイススラリー。2023年には全国高校野球選手権大会でアイススラリーを取り入れたチームもあり、選手たちが飲んでいるシーンがクローズアップされたことで、これまで以上に「熱中症対策にはアイススラリー」という認知が広まることにつながった。
そして2024年8月に開幕した第106回全国高校野球選手権では、試合前と試合中、5回終了後の10分間のクーリングタイム中の計4回のアイススラリー摂取を推奨。試合前に飲む「プレクーリング」を行うことで選手たちの熱中症対策を行っている。アイススラリーの活躍の場は今後も増えていくだろう。
熱中症対策には冷たい飲み物を飲む以外にも、手のひらを冷やすことが効果的だ。手のひらに体温調節を行う血管があるため、手のひらを冷水に10~15分程度浸けたり、氷の入った袋や冷凍したドリンクなどを持つことで、効果的に深部体温を冷やすことができる。
“10年に一度”と呼ばれるような災害級の猛暑が毎年続くような環境になった昨今、熱中症患者や死亡者は増え続ける一方だ。一方で、これまで着目されていなかった深部体温の重要性が生活者に一層認知されるようになったのも、ここ数年の大きな変化だ。熱中症対策は、気温が高くなるにつれ、「日陰に入る」「水分を取る」といった従来の対処法よりもさらに進化を遂げている。
樋口さんは、「アイススラリーをより生活者の身近なものにしていきたい」と今後の展望を話す。
「これからも『熱中症対策といえばアイススラリーだよね』と思ってもらえるくらいに身近なものにしていき、罹患者や死亡者を減らすために尽力したいです。『人々の健康を守る』を理念に掲げてきた弊社だからこそできることをしていき、世の中に貢献していきたいと思っています。今年の夏はアイススラリーを手に取って熱中症対策をしてください!」
夏の気温が上昇し続けるなか、熱中症対策の方法も毎年進化を続けている。自分や大切な人の命を守るためには、最新の情報を得て実践していくことが大事となる。特に、体表面温度だけでなく深部体温に気を配ることが、猛暑を耐え抜くためには不可欠だ。快適な夏を過ごすために、体内の冷却を行っていただきたい。
取材・文=越前与
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