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30度超えの日が多く、厳しい暑さが続きそうな今年の夏。ウォーカープラスでは、ゾッと震えるようなホラーから、暑さを忘れさせる怪談など、夏の季節に読みたい漫画を特集する。今回は、的野アンジ(
@matonotoma
)さんの漫画『僕が死ぬだけの百物語』(小学館)内の一篇「ポルターガイスト」を紹介。また、2025年に連載が完結した同作について、作者の的野アンジさんに連載の舞台裏を聞いた。
『僕が死ぬだけの百物語』は、「少年サンデーS(スーパー)」および「サンデーうぇぶり」で連載されたコミックス全10巻のホラーオムニバス漫画。「ポルターガイスト」は、第10巻に収録されたエピソードで、ポルターガイストとは物が勝手に動いたりと人の手を介さずに起きる心霊現象のことだ。
お盆の季節、墓石にビチャビチャと液体をふりかけ、笑みを浮かべる男。彼は数年ぶりに帰郷した一家の長兄だった。突然の帰宅に「なんで、帰ってきたんだよ!」と激昂する弟。兄は数年前に出ていったきり、父の葬式にも参列しなかったからだ。
「兄貴が呑んだくれてるから!」「それは親父も…」と言い争いになる兄弟をよそに、家の中では不可解な現象が次々と巻き起こる。誰もいないのに突然開いた玄関。無人なのに水が流れ、荒らされたトイレ。花瓶や遺影も一人でに倒れ、弟は兄の帰宅が亡き父の怒りを買っているのだと指摘する。
その言葉に「墓参りくらいはよく行っている」と反論する兄。その日も墓参りを済ませていた兄は、このポルターガイストの原因に思いいたり、大笑いしながら弟に告げる。父の墓に「酒をあげたんだよ」と。
読者には墓に罰当たりな行いのように思わせながら、真実は酒飲みだった父の供養をし、その念願がかなったという短編ホラー。同エピソードは作者の的野さんにとっても印象深い一篇だという。
「『ポルターガイスト』というお話は、描く直前に祖母が亡くなったので『お酒好きの祖母が天国で好きなだけ飲めますように』と願いを込めて描きました」
今回紹介したように、本作は1話につき1つの「百物語」が描かれる。これらの物語は作中に一貫して登場する少年・ユウマが語ったもので、百物語それぞれは独立した短編ホラーとして読めると同時に、ユウマを取り巻く物語が連載の中で明かされ、進展する縦軸も盛り込まれた作品だ。
本作で描かれる百物語は、「テケテケ」や「八尺様」といった既存の題材はあっても、ストーリーはすべて的野さんが編みだしたもの。「新しい怖い話を書くことは毎回大変でした」と的野さんは連載を振り返る。
「話数を重ねるごとに、前に描いた話と似ていないかを考えました。また、同じ手法は使えないということもあったので。ですが、そうして既出のお話とズラしていく中で、自分では思ってもいなかった方向に転ぶお話もありました。そして、それを読者に受け入れてもらえたのは意外でうれしかったです。10巻の中では『第九十六夜 完璧なコピー』や『第九十七夜 こっくりさん』がそうでした」
また、本作の単行本表紙はすべて少年・ユウマが描かれたイラストだが、9巻までの不気味なテイストと異なり、最終巻の10巻表紙はどこか祝祭感のある色彩で描かれている。
的野さんは「主人公のユウマくんにとって、百物語達成だけが生きる目的でした。その百話目にようやく到達したので、祝う気持ちで表紙を描きました。また、ここまでお話を読んでくださった方が、絵を見て、今までのモチーフ見つけて思い出し楽しんでもらいたいと思いました」と、最終巻ならではの意図を教えてくれた。
多彩なアイデアや演出で一篇ごとに異なる読み口のホラーを楽しめるオムニバス作品としても、ユウマを主人公にした長編ホラーとしても楽しめる同作。的野さんは興味を持った読者に向けて「『僕が死ぬだけの百物語』はオムニバスホラー漫画です。一つひとつのお話は短いので、ホラー好きの方はもちろん、苦手な方にも挑戦してみてほしいです」とメッセージを寄せた。
取材協力:的野アンジ(@matonotoma)
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