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30度超えの日が多く、厳しい暑さが続きそうな今年の夏。ウォーカープラスでは、ゾッと震えるようなホラーから、暑さを忘れさせる怪談など、夏の季節に読みたい漫画を特集する。
今回は、的野アンジ(
@matonotoma
)さんの漫画『僕が死ぬだけの百物語』(小学館)内の一篇「おはよう」を紹介したい。
『僕が死ぬだけの百物語』は、「少年サンデーS(スーパー)」および「サンデーうぇぶり」で連載されたコミックス全10巻のホラーオムニバス漫画。「おはよう」は、第2巻に収録されたエピソードで、学校で見かけた人もいるだろう「あいさつ運動」にまつわる心霊現象を描いている。
とある学校で、影の薄い人物として孤立していたとある少年は、同じクラスの風紀委員長・金子さんの「あいさつ運動」の瞬間だけ、自分が存在することを実感していた。
けれど、金子さんは交通事故で亡くなった。今は彼女の幽霊が、生前と変わらず「おはようございます」と教室であいさつ運動を続けていたのだ。
金子さんの霊が見えるのは少年だけで、クラスメイトにはあいさつは届かない。誰にも気づかれないながらも、彼女が変わらずあいさつをしてくれることを少年はうれしく思っていた。だが、金子さんが担任教師に付きまとっていることに気づき、さらに金子さんの生前のビジョンを垣間見たことで、彼女の死が「不幸な交通事故」ではないことを知る――、という短編ホラー。
クラスメイトが誰か1人でもあいさつを返すまであいさつ運動を続けろ、という担任の言いつけを死後も守っていた、という真相に、心霊現象とは異なる人間の恐ろしさが見えてくるエピソードだ。
幽霊の金子さんは、直接人に害を与えるような怪奇現象は引き起こさない。けれど、何かを言いたそうに歪められた表情が、真相のわからないうちは不気味に感じられる。こうした怖さの表現について「明確な恐怖の対象が出てくるよりも、今に何かが出てくるのではないかという状態で待っているときが一番つらく怖いと思います」と、的野さんは見解を語る。
「怪奇現象よりも、ハラハラ汗水垂らしている人間を描いていることが多いように思います」と話すように、このエピソードでは唯一金子さんが見える少年のリアクションが、怖さを引き出す1つのトリガーになっている。また、絵面で読者を怖がらせるのが漫画ホラーの強みだが、そうした直接的な“怖い絵”がない場合は「話の中になにか驚きがあるよう心がけています」と的野さんは言う。
そんな本作で描かれる百物語はいずれも的野さんがストーリーを構築している。物語を考える中で、「郵便受けや鏡など、なるべく身近なものをテーマに置いています」と創作のポイントを話す。これは漫画の中だけの話になってしまわないようにという意図がこめられているそう。「読んだあとにも気になったり、嫌な気持ちになっていただきたいです」と、単なる恐怖で終わらない、それぞれのエピソードが持つ奥行きも魅力だ。
取材協力:的野アンジ(@matonotoma)
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僕が死ぬだけの百物語 (2) (サンデーうぇぶりSSC)
僕が死ぬだけの百物語 (10) (サンデーうぇぶりSSC)
僕が死ぬだけの百物語
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